「なぜだ…なぜ私が損切りした瞬間に株価はV字回復するんだ…?」
「損切りは大事?わかってるよ!でも、この赤いボタンが押せないんだよぉ!」
チャートの神様に監視されているとしか思えない不可解な現象に、コントローラーを投げつけそうになっているそこのアナタ。その気持ち、痛いほどわかります。損切りという名の「自決ボタン」を前に、指は震え、心は千々に乱れ、気づけば含み損はエベレスト級…。
もう、そんな根性論と精神論だけの不毛な戦いは終わりにしましょう。
この記事は、巷に溢れる「損切りは大事!」という念仏をただ唱えるだけの記事ではありません。あなたが「なぜ損切りできないのか」という脳のバグを理解し、「どこで」「なぜ」損切りすべきなのかという明確な”根拠”を、明日から使えるレベルでインストールするための、いわば「損切りの取扱説明書」です。
読み終わる頃には、あなたは含み損を抱えてお祈りする子羊から、冷徹なマシーンのように、あるいは敏腕な外科医のように、躊躇なく損切りという名のオペを遂行できるトレーダーへと生まれ変わっているはずです(※効果には個人差があり、たまに震えることもあります)。
この記事があなたの「最後の損切り記事」になる理由
- 損切りできない根本原因「プロスペクト理論」を面白おかしく理解できる。
- 「エントリーの根拠=損切りの根拠」という、勝ち組の思考法が手に入る。
- コピペで使える具体的な損切り根拠の作り方がわかる。
- 永遠の謎「損切り貧乏」から抜け出すための禁断のテクニックが学べる。
そもそも論!なぜ我々は「損切りボタン」を押せないのか?
問題の解決には、まず原因の特定が必要です。あなたが損切りできないのは、意志が弱いからでも、才能がないからでもありません。ただ単に、人間の脳がそのようにプログラムされているからです。犯人は「プロスペクト理論」という脳の厄介なクセ。
あなたの脳内で起きていること
😇 利益が出ている時
「やった!1万円の利益!」
脳の指令:「この幸せ、失いたくない!早く確定して安心したい!」
→ チキン利食い🐔
👿 損失が出ている時
「うっ…1万円の損失…」
脳の指令:「この痛みは耐え難い!現実を認めたくない!いつか戻るはず!」
→ 塩漬け職人👨🍳
結論:人間の脳は「利益は小さく、損失は大きく」するようにできているポンコツ仕様なのだ!
この脳のバグに抗う方法はただ一つ。感情を挟む余地のない、明確で客観的な「ルール=根拠」を持つことです。
デイトレ損切りの大原則:「なぜ買ったか?」の答えが、損切り場所を教えてくれる
ここがこの記事の心臓部です。よく聞いてください。
「損切りライン」は、エントリーとは無関係に決めるものではない。
「エントリーした根拠」が崩壊した場所こそが、唯一絶対の「損切りライン」である。
これを恋愛に例えてみましょう。
エントリーと損切りは表裏一体
「この人と付き合いたい!」(エントリー)には、理由がありますよね?
✅ エントリー根拠(好きになった理由)
- 上昇トレンドに乗っている(優しくて頼りになる)
- ゴールデンクロス発生(価値観がピッタリ)
- 出来高が急増している(将来性も感じる)
❌ 損切り根拠(別れるべきサイン)
- 上昇トレンドが崩れた(優しくなくなった)
- デッドクロス発生(価値観が合わなくなった)
- 出来高が急減した(将来性を感じない)
好きになった理由が消えたのに、ダラダラ付き合い続ける(塩漬けする)のは不毛だと思いませんか?
「なんとなく上がりそう」というフワッとした根拠でエントリーするから、損切りも「なんとなくこの辺かな…」となり、機械的な判断ができなくなるのです。
【実践カタログ】今日から使える!損切り根拠の具体的な作り方
では、具体的な「根拠」の作り方を見ていきましょう。ここでは、多くのトレーダーが武器として使っている代表的なテクニカル指標をベースにした、損切り根拠の作り方を紹介します。
根拠の種類 | どんな時に使う?(エントリー根拠) | 損切りライン(根拠が崩れる場所) | 一言解説 |
---|---|---|---|
支持抵抗線 (レジサポ) |
過去に何度も反発している支持線(サポート)で反発したのを確認してエントリー | その支持線を明確に下に割ったところ | 「みんなの防衛ライン」。ここが突破されたら総崩れの合図。 |
移動平均線 (MA) |
株価が25日移動平均線の上で推移しており、タッチして反発したのでエントリー | その25日移動平均線を明確に下に割ったところ | 「相場の平均身長」。平均を下回ったら危険信号。 |
トレンドライン | 安値と安値を結んだ上昇トレンドラインに沿って上がっており、タッチして反発したのでエントリー | その上昇トレンドラインを明確に下に割ったところ | 「上昇気流の命綱」。これが切れたら落下注意。 |
直近安値/高値 | 直近安値を更新せず、切り上げてきたのでエントリー | エントリーの根拠となった直近安値を下に割ったところ | シンプル is a ベスト。ダウ理論の基本で、多くの人が見ている。 |
※「明確に割る」とは、ローソク足の実体で割ることを指すのが一般的です。
永遠の悩み「損切り貧乏」からの卒業!ストップ狩りを華麗にかわす術
「よし、根拠を持って損切りラインを決めたぞ!…なのに、なぜかピンポイントでそこをタッチして反発するんだ!」
この現象、通称「損切り貧乏」。デイトレ七不思議の一つですね。これには明確な理由があります。
損切り貧乏のメカニズム
あなたの損切り注文、大口投資家(機関投資家など)から丸見えです。
【1】多くの個人投資家が「キリのいい価格」や「教科書通りの安値」に損切り注文を置く
⬇️
【2】大口投資家「フム、ここに注文が溜まっているな…いただきまーす!」
⬇️
【3】一時的に株価をそこまで押し下げ、個人投資家の損切り注文を刈り取る(=ストップ狩り)
⬇️
【4】用が済んだので、株価は元のトレンドに戻っていく(V字回復)
結論:正直者がバカを見る、それが相場の非情な一面。
ではどうすれば? 対策は「ちょっとズラす」こと
対策はシンプルです。誰もが意識する教科書通りのポイントから、ほんの少しだけズラした場所に損切りラインを置きましょう。この「少し」のバッファが、無駄な損切り(ノイズ)からあなたを守る盾になります。
- 支持線や直近安値の場合:そのラインの数ティック下に設定する。
- ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)を活用する:相場のボラティリティ(変動幅)を考慮し、「安値 – ATRの〇倍」といった計算式で機械的にバッファを持たせる上級テクニックもあります。
まとめ:損切りはコストであり、未来への投資である
長旅、お疲れ様でした。もうあなたは、感情に振り回されて損切りボタンの前で固まることはないはずです。
損切りマスターへの最後の巻物
- 損切りできないのは脳のバグ。感情を排除し「根拠」で戦え。
- 損切りの根拠は、「エントリーした根拠が崩れた場所」。これ絶対。
- 「なんとなく」のエントリーが、「なんとなく」の損切りを生む。エントリーを制する者は損切りを制す。
- 損切り貧乏対策は「みんなが見ている場所から、ほんの少しズラす」優しさ(?)。
- 損切りは「負け」ではない。次のチャンスに備えるための「戦略的撤退」であり「必要経費」なのだ。
損切りをマスターすることは、デイトレードという荒波を航海するための最強の羅針盤を手に入れることです。時には痛みも伴いますが、その小さな痛みの積み重ねが、あなたを致命的な座礁から守ってくれます。
さあ、明日から「ナイス損切り!」と自分を褒められる、新しいトレーダー人生を始めましょう!
参考文献
- 著名投資家cis氏、BNF氏等の各種インタビュー記事
- 書籍『ゾーン — 相場心理学入門』(マーク・ダグラス著)
- 書籍『デイトレード』(オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ著)
- 行動経済学に関する各種論文(プロスペクト理論)
- 松井証券、楽天証券等が提供する投資家向け学習コンテンツ